スターの肖像 (文春MOOK)

文芸春秋関係の雑誌にでた記事やインタビューを集めてできた本。すべて面白く読む事ができたが、時代の流れをも感じた。例えば、笠智衆の思い出を語る氏の御子息が現時点では既に鬼籍に入られていたり、宮川一夫が雷蔵の思い出を語っているのだが、氏も現時点ではお亡くなりになっている。また、雷蔵未亡人の雷蔵死後40年で始めて語った彼の思い出、玉緒の語る勝新の死去前後の有様、若尾文子の語る黒川紀章の記憶、田中絹代の人生と死去の様子など、面白いが切なく悲しい話が多かった。その点、ご健在の司葉子の川本三郎による２年前のインタビューはさわやかだった。評者が一番面白かったのは、勝新太郎の思い出を白井佳夫が綴ったもので、彼の破天荒でどこか憎めない人柄がよく浮かび上がって来ている。勝新と森繁の対談も収録されているのだが、勝を上回る森繁の怪人ぶりが迫力。やや古い日本映画に興味を持つ人にはうってつけの一冊。少し不満を述べれば、往年の名女優の登場が少なかった事か。しかし、原節子は逝去に伴って多くの本が出されているし、仕方がないか。でも岩下志麻、淡島千景、新珠三千代や山本富士子の記事もきっと文芸春秋にはあったろうにと思ってしまった。小津の書いた文章が読めるのもうれしい。